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風営法コラム
2021.07.06

083.コラム ~ 保全対象施設に異議あり

コロナ禍における事業者向けの助成金などに関して、風俗業者に対する差別的扱いを問題視する世論が
一瞬盛り上がったように感じました。

キャバクラやホストクラブが感染の温床と見られて注目を浴びたからだと思いますが、結果としては、
公的補助金においては、性風俗関連営業とその他の営業を区別するということで落ち着いています。

だったら性風俗は無視していいのか?とは思いますが、ここは難しい問題がありますからさておき。

風俗営業に対する認識が徐々に変化している中で、私が最大の問題だと考えているのは
<保全対象施設による規制>です。

たとえば、こんな話がありえます。

A市では保育所設置の募集要項において、設置予定場所の近隣に風俗営業所があるときは当該風俗営業者
から同意書をとって認可申請時に提出することになっていました。

民間事業者であるBはA市に保育所の認可申請をした際に、近隣に風俗営業所が多数入居している<C建物>
があるにも関わらず、その事実を隠して、つまり同意書を添付せずに申請し、A市はその申請に基づいて
認可しました。

C建物のオーナーはその事実を知ってA市に苦情を言いましたが、すでに認可後でした。

このあとどうなるか。A市の立場としては、悪いのは嘘をついて認可を受けたBであり、A市には
落ち度がないと主張している。しかし、Bは<同意書をもらうべきはC建物で営業している営業者
からであって、建物オーナーは関係ない>と言います。

ま。募集要項を無視して認可申請したBに落ち度がないわけはないのですが、
そもそもその募集要項は、なんでそんな内容になっていたのか。

法的には認可要件として近隣風俗営業者の同意書は不要なわけです。
しかし、A市は近隣事業者への配慮かなにかで、そういった募集要項を作った。

C建物のオーナーや風俗営業者にしてみると、そういった配慮はありがたい話ではありますが、
無視されて手も足も出ないなら意味がない、とは思いますよね。

実は、保育所を認可する市区町村が<保育所と風俗営業者とのトラブル>を回避するために配慮している
ケースは少なくないのです。

私の感覚としましては、保育所行政がそこまでしてくれているんだなと感心するわけですが、結局こうして
トラブルに巻き込まれてしまうのは胸が痛みます。善意が仇になったみだいな。

で。私が言いたいこと。

商業地域内で児童福祉施設を風営法で保全するのは、もうやめませんか?
ということです。

デメリットは大きいわけです。ビルのオーナーは隣に保育所ができたら損失を被るリスクを抱えている
わけですから。

しかも、将来保全対象施設として利用することが決定した土地を保全対象に含むという規定。
風俗営業者にとっての不許可リスクが無駄に大きいです。

一方で、メリットがほとんどないと思うのですよ。保育所だって、商業地域でやる以上はそれなりに
覚悟しているわけだし、市役所が風俗営業者に対して遠慮している始末。

「風俗営業なんかに遠慮はいらんよ」

という声が聞こえてきそうですが、それが「差別」なんですよね。

つまりこれは悪法だと思うのですが、法律ではなくて都道府県条例だから国レベルで議論しても意味がない
という話に持ち込まれてしまう。

そういうことではないでしょ、と私は言いたいのですが、こういったことを問題視する人がいないですからね。。。

 

 

風営法研究会
研究員 日野孝次朗

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