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けんぱちコラム
2014.07.29

038.コミュニケーションは脳トレ!

   プリンストン大のステファンらは、いい感じに会話しているときの話し手と聞き手の脳活動を同時に計測し、
互いの脳がよく同調していることを報告しており、会話が行き詰るとこの同調現象が消失するそうです。
それだけではなく、いい感じに会話しているときは、聞き手が「予測」や「比喩の理解」にかかわる左の
上側頭回の活動を、話し手より先に勝田宇させており、この活動が強いほど「いい感じ」が強まるそうです。
うまいコミュニケーションのキーは聞き手にあり、いいコミュニケーションは脳を鍛えるのです。

Stephens GJ, Silbert LJ, Hasson U. Speaker-listener neural coupling underlies successful communication. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Aug 10;107(32):14425-30.

実際、相手の気持ちを理解しようとする会話や議論で、記憶や情報を一時的に保持し組み合わせて答えを
出すために必要なワーキングメモリの力が伸びることが示されています。

Oscar Ybarra , Piotr Winkielman, Irene Yeh, Eugene Burnstein, Liam Kavanagh:Friends (and Sometimes Enemies) With Cognitive Benefits: What Types of Social Interactions Boost Executive Functioning? Social Psychological and Personality Science May 2011 vol. 2 no. 3 253-261

  また、フィンランドの1449人を10~25年追跡調査した研究で、調査開始時(平均50.4歳)ひとり者で、
調査終了(平均71.3歳時)にもひとり者だった人は、
一緒に住むパートナーがいる人に比べて、認知障がいのリスクが三倍に上り、
特に死別によってひとり身になった場合は7.67倍に上がったそうです。
興味深いことに、このパートナー効果は暖かい愛情によるというより、パートナーとの日々の生活が
認知的負荷となることでトレーニングされることによるそうです。
「いい感じ」のコミュニケーションだけがだいじなのではなく、いて、もめるだけで、
脳にとってはトレーニングなのです。

Håkansson K, Rovio S, Helkala EL, Vilska AR, Winblad B, Soininen H, Nissinen A, Mohammed AH, Kivipelto M. Association between mid-life marital status and cognitive function in later life: population based cohort study. BMJ. 2009 Jul 2;339:b2462.

諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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