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けんぱちコラム
2020.07.21

109.認知機能に関しては「酒は百薬の長」は役立つらしい

かつて「百薬の長」といわれた「酒」は、近年では少量であっても量反応的に健康リスクが高まることが
知られています。一方で、認知機能に関しては、ワインを常飲する地中海食で認知機能の低下予防や、
認知障害の予防に役立つとする研究も多数ありますが、そうでないとする研究もあります。

そこで、米国成人の全国的に代表的なサンプルである健康および退職研究(HRS)の参加者について
前向きコホート研究を行ったそうです。平均年齢61.8歳を9.1年追跡し、1996年から2008年にHRSで
認知機能が測定され、少なくとも3回の隔年調査に参加した19887人の参加者について実施したそうです。

その結果、低から中程度の飲酒(女性の場合は週に8杯未満、男性の場合は週に15杯未満:一杯(1ドリンク)
は純アルコール10g:ビール500mlは2ドリンク)は、一貫して高い認知機能が認められ、その割合の低下も
低かったそうです。

全く飲酒しない人と比較して、低から中程度の飲酒者は、総認知機能(オッズ比[OR]、0.66; 95%CI、
0.59-0.74)、精神状態(OR、0.71; 95%CI 、0.63-0.81)、単語想起(OR、0.74; 95%CI、0.69-0.80)、
および語彙(OR、0.64; 95%CI、0.56-0.74)で高かった(すべてP <.001)そうです。

また、低から中程度の飲酒は、総認知機能低下の年間率の低下(β係数、0.04; 95%CI、0.02-0.07; P = .002)、
精神状態(β係数、0.02; 95%CI、 0.01-0.03; P = .002)、単語想起(β係数、0.02; 95%CI、0.01-0.04; P = .01)、
および語彙(β係数、0.01; 95%CI、0.00-0.03; P = .08)も低かったそうです。

消費されるアルコールの飲酒量は、すべての参加者のすべての認知機能とU字型の関連性があり、最適な飲酒量は
1週間あたり10〜14杯だったそうです。

JAMA Netw Open. 2020 Jun 1;3(6):e207922. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.7922.
Association of Low to Moderate Alcohol Drinking With Cognitive Functions From Middle to
Older Age Among US Adults
Ruiyuan Zhang , Luqi Shen , Toni Miles , Ye Shen , Jose Cordero , Yanling Qi , Lirong Liang , Changwei Li

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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