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けんぱちコラム
2021.11.25

125.「遊技障害のおそれのある人」と臨床例等との乖離と予防について、その⑩

前回のコラムの続きです。

以下、遊技障害研究最終報告書、西村先生の論考からの引用です。

ギャンブリング産業による自発的な負の影響の抑止対策は、Responsible Gaming(RG:責任あるゲーミング)
と呼ばれています(Blaszczynski, 2004)。
自発的な個々の企業対策からスタートしたRGは、ギャンブリング産業を管理・監督する行政との協働、RG概念の
世界的な共有という形で変化し、個々の企業の枠組みを超えた広がりをみせています。

RGの基本的な骨格には、顧客保護、従業員教育、環境整備と規制、広告の規制、治療の紹介、ステークホルダーの
連携、研究と検証などが含まれています(Ladouceur, 2016)。

日本では、RGの概念が普及しておらず、世界的なRGフレームワークを日本国内で推進する公的な施策は今のところ
ありませんが、遊技産業には、企業/産業の自発的かつステークホルダーとの協働により害の最小化などのRG概念
に添った様々な対策をとることが求められる時代となっています。

RG指向の対策では、より重度の問題を抱える人を対象とした治療的アプローチよりも対象者の幅が広く、
①未成年やプレイヤーではない一般の人たちへの予防や啓発、
②一般のプレイヤーに向けた啓発や教育、
③潜在的に問題化しやすいプレイヤーの同定、
④潜在的に問題化しやすいプレイヤーへの啓発や教育、問題化防止のサポート、
⑤問題が既に生じているプレイヤーの早期発見や対応方法、
⑥これらを可能とする戦略の立案や人材育成および従業員教育の実践、
⑦地域社会や対策関係者などのステークホルダーとのコミュニケーションと協働など、
はるかに多様なアプローチが可能となります。

しかし、そのためには、より広い視野で、ギャンブリングに関連する負の影響や結果を理解し、把握する必要があります。
そのため、世界のRG対策では、科学的であること、エビデンスベースであることが重視され(NCRG, 2017)、
調査・研究の成果が、世界のRG対策の関係者(企業、行政管理組織、対策関連団体、研究者ら)間で常に更新され、
共有されるようになっています。

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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