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けんぱちコラム
2021.10.19

124.「遊技障害のおそれのある人」と臨床例等との乖離と予防について、その⑨

前回のコラムの続きです。

以下、遊技障害研究最終報告書、西村先生の論考からの引用です。
遊技産業は、独自の調査や電話相談サービスの提供支援など、パチンコ・パチスロ遊技障害への
対策に取組んで20年近くなりますが、対策を支えるための学術的なエビデンスは十分ではありません。
また、国の水準でのギャンブル等依存症対策においても、対策が動きだしてからもまだ日が浅く、
対策のためのエビデンスはこれから集積が期待される段階です。

このような現状ではありますが、今後の対策を進めていくうえで、諸外国におけるギャンブリングに
関連した負の影響の抑止対策で得られた知見は、パチンコ・パチスロ遊技障害への対策に応用できる
ことも多いと思われます。

ギャンブリングに関連した健康問題に直面している、または直面する可能性が高い人たちに対する
世界の対策を鑑みると、
①医療や治療機関、それらの治療専門職が対策の中核となり、既に生じているギャンブリング問題
(ギャンブリングに関連した健康問題に直面しているプレイヤー/ギャンブリング障害の基準を満た
している人たち)の減少に焦点をあてた治療的アプローチと、
②公衆衛生や予防科学の専門機関やそれらの専門職とギャンブリング産業の協働によってなされる、
問題の発生や問題の深刻化の予防や防止に焦点をあてた予防・公衆衛生的アプローチとの二つの軸
があり、それぞれが独立または、融合しながら、展開されています。

また、近年の諸外国の対策とその調査から、ギャンブリングに関連した健康問題に直面している
プレイヤーやギャンブリング障害の基準を満たしている人たちだけではなく、その水準に至って
いないプレイヤーの害の削減に焦点をあてることの必要性と、問題水準の低いプレイヤーや地域
住民に焦点をあてた問題発生の予防対策が、重度の問題を抱える人たちの発生削減につながると
するPrevention Paradoxの視点の有用性が指摘されています(Delfabbro, 2017)。

臨床(治療)水準以下の多数のプレイヤーや地域住民らへの問題発生予防や早期介入に重点を置いた
公衆衛生アプローチが、SDGsの視点からも、ギャンブリング産業が取り組むべき課題であるとの
認識が産業内でも共有されてきています。

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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