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けんぱちコラム
2024.07.23

157.ギャンブル依存症疑い、ゲーム依存症疑いの数や率のウソ

WHOは2022年、ICD-11(国際疾病分類第11版)1)でgambling disorder(ギャンブリング障害、
ギャンブル症)においてDiagnostic Requirements(診断必須要件)をはじめて記載し、
「ギャンブリング行動のコントロールが障害されている」「ギャンブリング行動が他の生活上の
出来事より優先されている」「ネガティブな事柄が続いているにもかかわらずギャンブリングが
継続または拡大している」の「すべて」を満たし、かつ他の精神的な障害では説明できず、個人、
家族、社会、教育、職業など重要な領域で顕著な障害や苦痛が1年以上生じている場合を
ギャンブリング障害と限定しました。

そして、双極性障害Ⅰ型Ⅱ型やhazardous gambling or betting(危ない遊び方)をExclusions
(除外項目)としました。危ない遊び方はICD-10(国際疾病分類第10版)2)でのgambling or
betting(Not Otherwise Specified)(他の特定不能のギャンブリング、ベッティング)にあたり、
疾病や障害ではなく健康行動にかかわる問題として、運動不足や不適切なダイエットなどと並んで
記載されています。

わが国のギャンブル等依存症実態調査3)で用いられてきたSOGS(South Oaks Gambling Screen)、
PGSI(Problem Gambling Severity Index)4)、パチンコ、パチスロに特化した遊技障害疑いを
測定するPPDS(pachinko-pachislot playing disorder scale)5)など、これまでのギャンブリング
障害関連尺度はICD-11の三要件のすべてを必須とはしていません。
また、生活上の顕著な障害や苦痛も必須とはしていません。

したがって、これらの尺度による調査はICD-11基準ではギャンブリング障害疑い調査とは言えず、
おおむね危ない遊び方を測定していたと考えられます。
この事情はゲーム障害でも同様で、ゲーム依存症疑いとされるもののほとんどは危ない遊び方うたがい
と推測されます6)。

1)WHO: International Classification of Diseases 11th Revision(2023)を参照
2)令和2年度依存症に関する調査研究事業 令和3年8月久里浜医療センター
 https://ncasa-japan.jp/pdf/document41.pdf
3)WHO: International Classification of Diseases 10th Revision(2019)を参照
4)千葉市こころの健康センター: 千葉市におけるギャンブル参加状況および問題ギャンブルについての
 実態調査(2018)
5)牧野暢男、佐藤拓、西村直之、篠原菊紀、石田仁、坂元章、河本泰信:
 パチンコ・パチスロ遊技障害 研究成果 最終報告書、公益財団法人日工組社会安全研究財団 (2021)
6)篠原菊紀:「ゲーム障害」と「危険な遊び方」は違う、責任あるゲームプレイを、ゲーム障害全国調査
 報告書、付録14-18、ゲーム障害調査研究会、ゲーム障害全国調査報告書、(2023)

「はげひげ(菊仙人)」の脳的メモから
https://kikusennin.seesaa.net/article/503819922.html

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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