風営法研究会
内閣府令が改正されて、従業者名簿に本籍を記載する必要がなくなるとのことです。
名簿に本籍を記入することの問題性はかなり以前から研修で説明してきました。
風営法が義務付けている従業者名簿は、従業者を採用する際の年齢確認を徹底するために
必要な名簿ですから、従業員の年齢を確認するために必要な情報を記載しておけばよい
はずなのですが、本籍は年齢の確認に何ら関係が無い情報です。
個人情報保護の面で極めてデリケートな本籍情報の提供を企業が労働者に求めるにあたっては、
その根拠が「風営法で必要とされているから」という理由でした。
では、なぜ風営法がそれを求めるか。
そもそもパチンコ店従業員の年齢制限(18歳未満の)は夜10以降の接客の場合だけであり、
これは一般企業における年齢制限と実質的には同じです。
労働基準法の規制は接客を要件としないので風営法よりも厳しいのです。
一般企業と同じ年齢制限しか課せられていないパチンコ店が、年齢確認のために労働基準法
だけでなく、風営法からも名簿の備え付けを強制される理由はどこにあるのでしょう。
本当かどうかわかりませんが、電子記録の管理では許さず紙で名簿を印刷しなければならないとか、
同一企業が経営する店舗でありながら他店に異動した際にも元の店舗で3年間保存せよとか、
いろいろな行政指導を受けている話を耳にします。
ホールもその指導のとおり真面目にしっかりやっておられる。
そのための膨大な事務コストには、いったい何の意味があるのか?と思います。
風営法は風俗と風俗環境の保持、そして少年の健全育成を阻害させないことを目的とした
法律なので、その目的に無関係なことを風営法を根拠にして風俗営業者に強制することは
できないはず。
つまり、風営法関係法令にはおかしなところがあるということですが、
このケースでは労働者のプライバシーを意味無く長年危険にさらしてきたわけです。
私達はどうしても「法令に書いてあるとおりにすればよい。」と考えてしまいますが、
それは公務員ならばともかく、一国民又は一事業者の立場から考えれば、おかしいものはおかしい、
と気がつく感覚があって当然のことです。法令に根拠がないことなら、なおさらのこと。
そういった法的なセンスが不足しているところも業界に潜む弱点ではないかと思うのです。
法令を守ることは大事ですが、法令の趣旨を理解しないで丸暗記しても意味がありません。
その趣旨や仕組みを全体としてご理解いただき、わからない人がいれば自分の言葉で、
そしてときには法令集という辞書を引きながら、自分が正しいと思う解釈を説明できるように
なっていただきたいと願っています。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗