風営法研究会
以前、このコラムで「構造及び設備の技術上の基準」のなかには、ホール営業であまり注目されていない基準がある
という話をしました。
一方で、ホールでよく注意されているのは、「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。」という基準です。
平成23年6月15日の警察庁通達で、ホール営業における具体的な解釈が示されたことがきっかけとなって、
ホールの現場で注目されるようになりました。
床面からの高さが100cmから170cmまでの高さの設備は「見通しを妨げる」という考え方が示され、
これに抵触する広告物や装飾などについての問い合わせも多くなりました。
実際に指示処分が出るケースもあるので、現場の皆さんがいろいろ不安になるのはわかりますが、
ご相談を受けた際によく思うのは、「この規制に意味があるのか。」ということ。
例の通達の中では、この規制の趣旨として、「風俗営業の営業所内において、善良の風俗を害するような行き過ぎた
行為が行われることを未然に防止しようとすることにある。」とあります。
「行き過ぎた行為」としては、違法な賭博行為が思い浮かびます。
たとえば、店内で客同士で賭けパチンコをしていた場合などでしょうか。
見通しの悪い場所でそんなことをされていたという話は聞いたことがないし、島から飛び出したポップなどに
隠れてそんなことができるとも思えません。
なにより、4号営業では客室の床面積の制限がないので、結局意味がないと思うのです(これについてはまた後日)。
つまり、あまり意味のない基準のように思えなくもないのですが、規則では4号営業の設備基準として現に存在しているし、
「未然に防止」するための基準なのでので、豊かな想像力を持って考えてしまうと、
「意味がある」ということにもなるでしょう。
とは言っても、通達にあるような細かい解釈を現実にあてはめながら判断するのは、実際は容易でなかったりします。
すみません。私は実は、あの通達をきちんと読むことはあまりないのです。
これは私の勝手な考え方ではありますが、要するに、「不必要に見通しを妨げるようなことはしないでね」という
趣旨の通達だと考えています。
つまり、島設備も遊技機も精算機も、見通しを妨げているのではありますが、パチンコ店営業である以上は、
それをやめろというワケにはゆきません。
かと言って、規則で書かれた設備基準を無視されても困ります。
よって、営業上可能な範囲では見通しを妨げないようにしていただこう。
ムリは言わないけど、やれる範囲ではやりましょうと。
そういった考え方をホール営業にあてはめて具体化した文章があの通達なのであって、
通達をやたら細かく分析して悩まなくても、よいのではないかと思ったりします。
悩ましいケースならば趣旨で考えればよい。とは言っても、現実に指示処分を受ける立場としては、
そんなテキトーことでは済まないという気持ちもわかります。
でしたらゴメンナサイ。趣旨などは考えないで、「通達に書いてあること」に違反していると
絶対に言われないように、通達を厳しく解釈してゆくしかありません。
私がどう思おうとも、実際に通達を使う人が「こうだ」と思ってしまえば、そういう結果になるのですから。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗