風営法研究会
いろいろな仕事の中で、一番受けたくない仕事。
それは保全対象施設の調査です。
風俗営業の許可を受けようとする場合、営業所の周囲に学校や病院など、いわゆる「保全対象施設」が
あってはならないという基準を気にしなくてはなりません。
この「場所の基準」にひっかかってしまうと不許可になります。
小さなスナックの名義変更くらいならともかく、何億円もかけて遊技場を新築した場合には、不許可
による損害は致命的です。
ですので、ホール事業者としては専門家に依頼して調査したいと思うのは当然ですが、
これを受ける方としては気分が重いです。
そういったことはこのコラムで以前に述べましたが、やっぱりイヤだ。やりたくない。
というか、法制度上おかしいでしょ。と思います。
土地の買収から許可取得まで何年もかかったりするのに、不許可の場合のリスクを事業者が
負わなければならない。
では、それほどのリスクを負わせなければならない事情はどこにあるのか?
そこには、「風俗営業者の立場なぞどうなろうと構わない」といったような差別感情が無いと
言い切れるのでしょうか。
いまや全国にチェーン展開する企業も風俗営業にかかわる時代なのに、あまりにアンバランス。
ならばどうしてほしいかと言うと、営業所設置場所について仮の許可申請をさせていただきたいということです。
つまり、用地確保の時点で公安委員会に仮申請を受理してもらったら、その後で保全対象施設が開設されても
場所の基準に影響しない。
ただそれだけのことなのです。
たいした手間もかかりませんが、どうしてこれがダメなのか。
おそらくは<面倒くさい>といった程度のことであろうし、保全対象施設の問題がいかに深刻であるか、
関係者の方々にはピンときていないのではないかと思います。
以前にも触れましたが、現行の条例では、<未来に保全対象施設が設置される計画のある土地>まで
保全対象となっています。
では、それを事前にどうやって探知するのか。
実はこのあたり、かなりあいまいです。
保全対象施設がいつの時点から保全されるのか。
これの線引きもあいまいで、「事案ごとに検討を要する」という話になりがち。
これでは安心して新規開業できませんから、早くのこの問題を解決してほしいです。
なお、保全対象の問題は許可取得後にも生じます。
受動喫煙対策で構造変更した場合に変更承認申請をするのであれば、保全対象施設の有無を調査する
ことになります。
もし存在していたら、営業所の拡張を制限する内容の許可条件を付与されるでしょう。
自分の店にはもう許可があるから関係ない、なんて思わないで、法制度のあるべき姿を模索してほしいです。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗