風営法研究会
お客さんがスロットを遊技中に目押しの作業だけを店員さんがしてあげるという、いわゆる「目押しサービス」は
禁止されていると言われています。
ではその法的根拠は?というと、なかなか難しいのです。
目押しサービスはよくないこと。なぜなら技術介入性がなくなってしまうから。
という認識は皆さん持っておられます。
そうですね。ハンドル固定の場合と同じく、遊技客の技量が遊技結果に影響しなくなってしまうと、刑法で言う
ところに「賭博」になってしまう。
だから目押しサービスはやめましょう、ということはわかるんですが、違反処分が出るためにはなんらかの法的
根拠が必要です。
刑法では賭博であっても、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは処罰しないことになっていますから、
目押しサービスを実施することがただちに刑法に違反するとは考えにくいです。
<刑法第百八十五条抜粋:賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。>
で。最重要である風営法を調べてみますが、目押しサービスが違法であるということは書かれていないのです。
おしいところでは、風営法施行規則第8条にある「著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準」の回胴式
遊技機の中で、次の一文があります。
十二 回胴の回転の停止を客の技量にかかわらず調整することができない遊技機であること、回胴の回転が著しく
速い遊技機であること、役物を著しく容易に作動させることができる性能を有する遊技機であること、遊技の公正
を害する調整を行うことができる性能を有する遊技機であること、その他客の技量が遊技の結果に表れないおそれ
が著しい遊技機又は遊技の結果が偶然若しくは客以外の者の意図により決定されるおそれが著しい遊技機であること。
「遊技の結果が偶然若しくは客以外の者の意図により決定されるおそれが著しい遊技機」を設置して営業を営んで
はならない(風営法第20条第1項違反)ので、これが目押しサービス禁止の根拠か。
しかし、この規定は遊技機の物理的状況についての規制です。
目押しサービスをするときに遊技機の性能を物理的にいじっているわけではありませんよね。
目押しサービスは遊技機の問題ではなく遊び方の問題なのです。
ならば目押しサービスは風営法に違反しないのか。
はい。違反であることを示す条文が風営法にない以上は風営法違反にはなりません。
しかし、風営法以外の法令の問題があることを指摘しておかねばなりません。
たぶん全ての都道府県の風営法施行条例において<賭博に類する行為>又は<著しく射幸心をそそるような行為>
を禁止する規定があります。
たとえば東京都の風営法施行条例の第7条では
「とばくその他著しく射幸心をそそるような行為をし、又はさせないこと。」という規定あります。
先述したとおり、目押しサービスは技術介入性を喪失させる営業行為ですから、「賭博」や「著しく射幸心を
そそるような行為」に該当する可能性を高めてしまいます。
というか、「賭博だよ」と言われてもおかしくない。
つまり目押しサービスは風営法に違反しなくとも風営法施行条例に違反するので今後も実施できないということ
です。
風営法だけではパチンコ営業において技術介入性を維持できないおそれがあるので、風営法施行条例で抜け穴を
ふさいでいるのです。
なお、もし目押しサービスが賭博に該当するとすれば、その遊技結果に対して現金等が提供されていた場合には
刑法の賭博罪等に該当してしまいます。
ホール業界にとって極めて重大なテーマだということをご理解ください。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗