風営法研究会
ホールにおける島設備等の取扱いについて、ホール関係4団体から警察庁に対し照会を行い、二点に
ついてご回答(2022年11月22日)をいただいた件の一件目については前回のコラムで解説しました。
今回は二つ目の<一時的に営業の用に供されなくなった島設備は、「見通しを妨げる設備」に該当
するか>について解説します。
スマスロ遊技機の設置に際して、店舗では一時的に遊技機を撤去したまま再設置していない島列が
生じている状態の島設備が多く見受けられました。
このような場合に、その<一時的に遊技機が設置されていない島設備>が「見通しを妨げる設備」に
該当してしまうと、構造設備維持義務違反という風営法違反に該当する恐れがあります。
ここで言うところの「見通しを妨げる設備」とは、風営法解釈運用基準によると、<床からの高さが
おおむね100㎝を超えることにより客室内の見通しを妨げてしまう設備」を意味します。
常識的に見て島設備の高さが100㎝以下ということはまず考えられませんから、島設備は客室内に設置
されていれば当然ながら「見通し」を妨げることになりますが、そうなると、全てのパチンコ店は
構造設備維持義務違反になってしまいます。
これについて平成23年6月15日付の警察庁保安課長通達において次の解釈が示されています。
いわゆる島設備(この通達においては、ぱちんこ営業の用に供するための遊技機及び周辺機器を設置
するための設備をいう。)は、ぱちんこ営業の用に供するための遊技機及び周辺機器を設置している
場合に限り、「見通しを妨げる設備」に該当しない取扱いとする。(以上、抜粋おわり)
この通達によると、遊技機や周辺機器を設置している島設備は「見通しを妨げる設備」に該当しないと
いう解釈なのですが、これは裏返すと「遊技機を撤去している状態の島設備は見通しを妨げるのではな
いか?」という意味にもとれるわけです。
そうなると、遊技機が一時的に設置されていない状態の島設備は客室内に存在できない、ということに
なりますが、この問題をホールが回避する方法として「客室を縮小する」という方法があります。
「客室内の見通しを妨げる島設備」は、客室内に存在しているから「客室内の見通し」を妨げるのであ
って、客室を縮小することにより、島設備の設置場所を「客室の外」だということにしてしまえば、
「客室内の見通しを妨げる」ことにはなりません。
しかし、客室を縮小するのであれば、事前に公安委員会に対して構造設備の変更承認申請を行い、必要
な検査を経て承認を受けなければなりません。
遊技機が一時的に設置されていないという理由だけで、いちいち、しかも遊技機の撤去の前に変更承認
申請を行うのだとすると、ホール営業に過大な負担をかけることになるでしょう。
そこで今回の回答においては、「対象部分に係る島設備は、部分営業の期間においても「ぱちんこ営業
の用に供するための遊技機及び周辺機器を設置している場合」に含まれる」という解釈を明確にしました。
「部分営業」とは、<客室の一部が営業のために使用されていない営業>という意味でとらえてよいと
思いますが、要するに<営業中において一時的に遊技機が設置されていない状態の島設備は客室内の見
通しを妨げないものとして取り扱う」ということです。
一つ目の回答もそうですが、今回の回答は、法令を過度に厳密に解釈する傾向があることを前提にした
ものであり、常識的に考えればごく当たり前のことを言っているだけであるとも言えます。
風営手続きを扱う法務担当者の皆さんには複雑で悩ましい問題ですね。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗