風営法研究会
2022年12月23日付の「ぱちんこ営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)」が公表されました。
この通達によるもっとも大きな変化は、広告宣伝に関する違反行為への対応方法です。
ホール事業者の違反行為に対して違反処分を科すかどうかを判断するのは都道府県公安委員会(都道府県警)ですが、
その判断において事業者団体の意見を尊重するといったことは、運用上は明確になっていませんでした。
パチンコ店の広告宣伝でもっとも難しいのは、隠語性の判断です。つまり、ある言葉や表現が<客の射幸心を著しく
そそるおそれがあるかどうか>についての見識が求められます。
しかし、この隠語性の判断は、業界特有の最新の実情を理解していないとわかりにくい部分があります。
警察職員にとってパチンコ店は風営法規制対象のほんの一部であり、そのなかの広告宣伝の規制について正確に
理解し、さらには隠語としての問題性を個別に判断しろと言われても、そこまでの理解に到達するにはおのずと
時間がかかります。
しかも、ホール事業者は法令解釈のギリギリのところでせめぎ合いながら活動を行うのが常です。
そういった状況の中で、全国一律で公平に行政処分を出すというのは制度的に無理があったと思います。
ですので、同じような広告について、ある地域では違反処分が出ているが、ほかの地域では違反処分が出ていない、
ということはどうしても起きてしまいます。
今回の通達では、広告宣伝規制違反に関して都道府県公安委員会は、事業者団体による判断を尊重することとなり、
事業者団体からの是正勧告を先に行わせたうえ、是正勧告を無視するといったホール事業者が存在した場合には、
事業者団体からの情報提供を受けて公安委員会が当該事業者に指示処分を行うという方針を明確にしました。
事業者団体であれば隠語性の判断をしやすいでしょうし、全国共通の判断を行えるようになれば、その判断を
都道府県警が尊重することによって、「判断のブレ」を最小に抑えることが可能となります。
これはすなわち、警察庁が事業者団体の判断と実務運用の能力を高く評価していることを示しており、画期的な
ことだと思います。
あとは、業界団体において適切な運用を早期に実現できるかどうかにかかってくると思います。
これがうまく行けば、より柔軟で効果的な広告宣伝活動ができるようになるでしょう。
今後に期待しています。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗