風営法研究会
風俗営業者は風俗営業許可証を掲示する義務があります。
客から見やすいところに掲示しないといけないので、カウンターの上の「お花」の陰に隠れて許可証が
見えにくかった、という理由で指示処分が出たケースもあります。
このほかにも、行政手続きの事情で風俗営業許可証を掲示できない「とき」があります。
例えば、風俗営業が公安委員会から許可された直後です。
電話で許可通知が入った時点で風俗営業が許可されています。
しかし、許可証が交付されるまでに「時間」がかかります。
この「時間」が一日のときもあれば、ひと月以上というケースもありました。
営業所の名称を変更した場合も、風俗営業許可証の書き換え手続きのため、許可証をしばらく警察に
お預けすることがあります。
この間、風俗営業者は許可証掲示義務違反に問われるのか?
という問題がありますが、行政庁の態度としてはおおむね2種類が考えられます。
A 許可証が交付されるまで営業しなければいい
B 許可証が掲示できない正当な理由があるから掲示義務違反には問われない
Aの解釈を採用される場合、行政庁としては、なるべく速やかに許可証を交付する必要に迫られます。
もし許可証交付前に営業を開始されたら、許可証掲示義務違反が発生すると解釈するので、許可証を
掲示するまで営業を開始するなという指導をしたりもします。
それでも、許可証を掲示しないで営業を開始していた場合に、許可証を渡していないのは公安委員会
自身であるのに、許可証掲示義務違反で指示処分を出せるのか。
事業者が許可証を取りにいかないで放置している場合なら指示処分は可能でしょうが、ややこしい話
ではあります。
一方、Bの解釈を採用される場合は、行政庁としては許可証の交付を急ぐ必要が低めと思われます。
私としましては、Bの解釈の方がありがたいし、合理的だと思いますが、私は行政書士でもありまして、
お客さんの風俗営業許可証を警察署で預かり、それをお客さんにとどけるまでに要する時間があります。
私が許可証を預かっている間、お客さんのお店は許可証掲示義務違反になるのか。
これは気になることです。
お客さんに迷惑をかけたくはないのですが、許可証は重要なものだから、できれば直接渡したいときが
あります。
渡す前の時期に、もし行政庁から何か言われたら行政書士から事情を説明します、ということに
なります。
そういった様々な事情で許可証を掲示できない期間が数日以上にわたることもありえます。
そのためにいちいち営業をとめろとは言えませんね。
というわけで、万が一、行政庁から「許可証不掲示」を指摘されたときには、その正当な理由を説明
できるようにはしておきましょう。
それで指示処分を回避できるかどうかは、また別の話です。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗