風営法研究会
去る6月の行政講話では、
「警察庁としては、将来的な行政手続のオンライン化を見据え、業界の皆様と意見交換を行いながら、
改善に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。」
というお話しがありました。
オンライン化をはじめとする<デジタル社会の形成>という目標は、すでに政府の基本政策に組み込まれており、
風営法関係の行政手続きについてもオンライン化の実現は時間の問題です。
業界団体との意見交換が始まったということは、警察庁がこの課題に本気で取り組む意図であるということです。
ここで気になるのは、業界団体の意見を聞く必要とは何なのかということです。
行政手続きのオンライン化は警察庁以外の管轄ではすでに実績があり、運用方法も基本的には確立されています。
私も行政書士としては様々なオンライン手続きを行ってきましたが、たいていの行政手続きはオンライン化に
対応可能です。
「風営手続きでは図面が必要だからオンライン化は無理」という意見もありますが、保健所で食品衛生の
許可申請を取るときにも図面は必要で、画像データに変換した図面をオンラインでアップロードするだけ
のことで済んでいます。
住基ネットや法務局の登記情報と連動できたら、住民票の写しや登記事項証明書も不要になります。
管理者証を作るために提出する管理者の顔写真も画像データで送るだけですし、誓約書も使用承諾書も
PDF化して送ることができます。
行政庁が交付する許可証や管理者証は事業者の本拠に宅配で送るか、許可事業者情報をアプリやネットで
公開することでも代替できるでしょう。
これだけのことなら行政庁が粛々とオンライン化を進めればよいだけのことですが、オンライン化に
事業者が絡んでくる必要性がパチンコ業界の場合はありそうです。
それはおそらく遊技機に関係する部分でしょう。遊技機の設置や部品変更にからむ変更承認申請では
<検定通知書の写し>と<保証書>を添付します。
それらをPDF化してアップロードすれば済むのですが、そもそもそれって必要か?と思います。
<検定書通知書の写し>の原本は検定通知書ですが、これは公安委員会が発行したものです。
その写しを発行元にわざわざ提出するのは、行政上の事務を迅速に処理するという意味はあるでしょうが、
オンライン化されてしまえば、公安委員会が交付した書面の写しを公安委員会に提出する必要はないと思います。
遊技機に関する保証書については、民間事業者が作成した書面ではありますが、作成した事業者がネット情報で
「遊技機について確認した事実」を公開するなり、行政庁にオンラインで通知するなりすればすみます。
そもそもの話ですが、保通協の型式試験の申請から、公安委員会への検定申請、検定通知、個々の遊技機情報の
登録、点検結果の記録、売買記録、公安委員会への変更承認申請など。
これらの情報を一括して管理できるネットワークシステムを作ってしまえば、手続き上の手間を大幅に
低減でき、業界も行政庁も人手不足解消という恩恵を受けることになります。
それこそがオンライン化のメリットであり意義なのですが、問題はこれに業界関係者がどこまで
協力するかです。
システムの変化で不利益を被る人は必ずどこかにいるはずで、私のような行政書士にとっても、
手続きが面倒くさい方が仕事があるわけです。
とは言ってもオンライン化はやがて実現しますから、どうせなら中途半端なものよりも、無駄がなく
便利なシステムにしていただきたいです。
風営法研究会
研究員 日野孝次朗