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けんぱちコラム
2012.10.22

011「記憶はあいまい」

「あなた、あの時、~っていったじゃない!」「いや、そんなことは言っていない」「うそよ、言ったわ!」わが家でも時折起こる言い合いです 。
妻も私も自分の記憶が確かなものだと確信しています。事実はひとつのはずなのになぜでしょう。
ノースウエスタン大学のブリッジ博士らは、その謎に挑む実験をしました。
彼らは70人の被験者を対象に3日間にわたる記憶実験を行いました。
1日目、被験者にはコンピューター上で180個の物の配置を覚えてもらいました。
そして2日目に1度目のテストを実施し、3日目に2度目のテストを行いました。
その結果、すでに2日目には物の配置をほとんど覚えていませんでした。
そして面白いことに、3日目のテストでは1日目の正しい配置よりむしろ2日目の誤った配置に近い間違いがたくさん出てきました。
3日目の記憶は元の記憶ではなく(一日目の記憶ではなく)、2日目に上書きされた記憶を呼び戻していたのです。
記憶は伝言ゲームのようなもの。伝言ゲームでは人伝いにメッセージが伝わるたびに内容が変わっていきますが、わたしたちの記憶は呼び出すたびに不安定化し、 上書きされていくのです。
もっとも、冒頭のけんかでそんな説明をすれば、間違いなく火に油ですが・・・。

諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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