研究会
けんぱち研究会
けんぱち研究会
アメリカの製薬大手メルク社は、アルツハイマー病の治療薬として期待されていた薬剤
「ベルべセスタット(Verubecestat)」の開発を一部中断すると発表しました。
この薬は、今度こそ成功するのではと期待されていたものでしたが、どうやら認知機能の
衰えを防ぐことができないようです。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、過去10年間に世界中で行われた
アルツハイマー病の薬の試験のうち99.6%が失敗しているそうです。
しかし、これまで治療薬の開発が失敗してきた理由は「投与のタイミングが遅すぎた」
というのが有力な仮説となっており、それを見直した研究が始まっている、というのが
現在の状況であるといえそうです。
実は「ベルべセスタット」も、アルツハイマー病をすでに発症した方への試験は取りやめましたが、
『まだアルツハイマー病による認知症を発症していないけれど、そのリスクの高い人』への試験は
続けています。
ただし、もし新たにできる治療薬が、上記の仮説によって生まれたものであった場合、
薬は「認知症の発症が予測されるずっと前から使い始め、その後は死ぬまで中断できない」もの
になると考えられます。その場合、かかる医療費は高額なものになります。
「近い将来、薬が開発されて認知症から解放される」と楽観視できる状況ではなさそうです。
諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授