けんぱち研究会
国連薬物犯罪事務所の報告によると、薬物の過剰摂取や、薬物の使用を通じて感染したエイズなどの
疾患で死亡する人は世界で毎年20万人を超えます。
近年の研究で、薬物使用障害者の脳では欲求や快楽にかかわる報酬系が関連刺激で活性化しやすく、
また、学習、感情の制御、認知に関わる背外側前頭前野の活動が小さいことが報告されています。
そこで、依存症の治療を30年間行ってきたガリンベルティ医師らは、両側の背外側前頭前野を
「経頭蓋磁気刺激法(TMS)」で繰り返し磁気刺激することで、背外側前頭前野の活動が刺激され、
薬物に対する欲求等が抑えられるようになるのではないかと考えました。
コカイン使用障害16人に1カ月間TMSによる治療を施したところ、11人がコカインを断つことに
成功したそうです。比較のため、他の13人には不安や抑うつを和らげる薬の投与など従来の治療を
施しましたが、こちらは3人が成功だったとか。
TMSは脳内の電気回路に刺激を与える手法であり、うつ病や片頭痛の治療に以前から使われてきました。
最近では統合失調症の幻聴に効果があったとする報告もあります。
Transcranial magnetic stimulation of dorsolateral prefrontal cortex reduces cocaine use: A pilot study.
Terraneo A, Leggio L, Saladini M, Ermani M, Bonci A, Gallimberti L.
Eur Neuropsychopharmacol. 2016 Jan;26(1):37-44.
諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授