けんぱち研究会
前回のコラムの続きです。
遊技障害(パチンコ・パチスロでのギャンブル等依存:最新のICD-11の定義(WHOの定義)では
おおむね危険な遊び方)研究について、Q&A形式で紹介します。
Q:依存症とは言えないパチンコ産業従事者やパチンコファン自らが「自分たちは依存症だから」と
言ってしまう要因はどこにあると考えられますか?
A:ギャンブリング障害の定義、特に臨床的に意味ある障害や苦痛、が診断基準の柱であることが、
いわゆる専門家も見過ごしたりし、それが広がっているからだと考えられます。現状では単なる
比喩表現です。
WHOの定義で見れば、依存症ではなく、健康行動に影響を及ぼしうる「危険な遊び方」です。
WHOのギャンブル障害、必須な特徴
●主にオンライン(すなわち、インターネットまたは同様の電子ネットワーク上)またはオフラインで
行われる持続的なギャンブル行動のパターンで、以下のすべてによって明示される。
◎ギャンブル行動に対するコントロールの障害(例:開始、頻度、強度、持続時間、終了、状況)
◎ギャンブル行動が他の人生の興味や日常活動より優先される程度に優先度が高まっている。
◎否定的な結果(例:ギャンブル行動による夫婦間の対立、度重なる多額の金銭的損失、健康への悪影響)
にもかかわらずギャンブル行動を継続またはエスカレートさせている。
●ギャンブル行動のパターンは、継続的またはエピソード的で反復的であるが、長期間(例えば、12ヶ月)
にわたって現れている。
●ギャンブル行動は、他の精神障害(例:躁病エピソード)によりうまく説明されず、物質や薬の影響
によるものでもない。
●ギャンブルの行動パターンが、個人、家族、社会、教育、職業、またはその他の重要な分野の機能に
著しい苦痛または障害をもたらしていること。
危険な遊び方の説明(このレベルではギャンブル障害ではない) 危険なギャンブルや賭け事とは、本人や
周囲の人に身体的・精神的な健康被害が生じるリスクを著しく
増加させるようなギャンブルや賭け事のパターンを指します。リスクの増加は、ギャンブルや賭け事の頻度、
これらの活動に費やす時間やギャンブルや賭け事の状況、他の活動や優先事項の軽視、ギャンブルや賭け事
やその状況に関連する危険な行動、ギャンブルや賭け事の悪影響、またはこれらの複合から生じる可能性が
あります。ギャンブルや賭け事のパターンは、本人や他者への危害のリスクが高まっていることを認識して
いるにもかかわらず、持続していることがよくあります。
そんじょそこらでは、ギャンブル障害(≒日本でいうところのギャンブル等依存症)と呼ぶべきでは
ないのです。世にあふれる依存症チェックリストはおおむね危険な遊び方です。WHOに従えば障害や
疾病ではありません。
Q:今なお「パチンコ客は依存症が多い」をはじめとした誤った認識が蔓延していると思います。そうした
誤解を解くために効果的だと思われるデータありますでしょうか?
また、効果的な周知方法の考えがあれば教えてください。
A:社会安全研究財団のパチンコ・パチスロ遊技障害 研究成果 最終報告書(https://www.syaanken.or.jp/?p=11674)
日遊協データブック(https://www.nichiyukyo.or.jp/gyoukaidb_cat/databook/)2021,2022、の拙著
「「健全遊技」の推進は遊技業界の役割」「WHOのギャンブリング障害の定義が詳細に記述された!」
会員カード常時使用者におけるパチンコ・パチスロ遊技障害、健全遊技、遊技量の関係~会員カードデータを
用いた遊技障害リスクアラートシステムの可能性について~ 西村直之 、戸塚綾乃 、堀内智 、櫻井哲朗 、
奥原正夫 、篠原菊紀「アディクションと家族」第37巻1号(2022)76-84
健全遊技をしようというメッセージを出し続けることだと思います。
Q:パチンコ業界がとってきた依存問題対策活動は、効果があったと言えそうでしょうか?
効果があると思われる対策、また効果が見込めなそうな対策をお教えください。
また、その他に効果的と思われる対策があればお教えください。
A:自己申告プログラムは重要で、これをもっと拡張した形で健全遊技のチェックをしていくのが最も効果的です。
射幸性対策は実証的な意味があるとは思えません。西村ら2022を参照してください。
公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授