けんぱち研究会
将棋の藤井総太さんが7冠を達成したことが大きな話題になりました。
対局中はほとんど動くことがなく、それでいて割としっかりとした食事をとり、さらにお菓子も
食べるのによく太らないなと思います。
よく知られているように、脳は体重の2%程度の重さにもかかわらず、エネルギーは20%程度消費
する大食いです。普通の男性のカロリー消費は2500~2700キロカロリーですが、脳が20%使うと
いうときのカロリーは基礎代謝のことなので、だいたい1700~1900キロカロリーの20%、つまり、
340~380キロカロリーを脳が使うわけです。これはジョギング1時間くらいです。
しかし、これは、ぼーっとしていても脳が消費する分を考えないといけません。
実は、一生懸命考えているときと、ぼーっとしているときの差はそんなに大きくありません。
ぼんやりしているときでも70%くらいは消費しています。
つまり、一生懸命考えることで消費する分は、せいぜい100カロリーくらいです。
これは散歩一時間くらいであり、普通の人でも頭を使っている時間は長いので、棋士と普通の人の
差はせいぜい20カロリーくらいです。
加えて、安静時の脳活動はデフォルトネットワークといって、脳の「内側前頭前野」「後帯状皮質」
「楔前部(けつぜんぶ)」「下頭頂小葉」が働いています。
このネットワークで、ぼんやりと記憶探索したりそれをつなげたりする働きをしています。
実はひらめきはこの時におきやすいので、棋士はずっと必死で考えているようで、ちゃんとデフォルト
ネットワークを使っていると思われます。
そうなると、ますます、普通の人の脳の消費と棋士の消費の差は縮まります。
それでも、塵も積もれば山となるですが、座っている分、立ったり歩いたりしている人の方が
消費カロリーは大きいので、差は微々たるものになっていると思います。
公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授