けんぱち研究会
《エピソード記憶の新モデル》
授業では、進化的に考えたら、エサを得た場所など位置の記憶こそ記憶であるので、エピソード記憶は
海馬であると、脳システム論では話していました。
そして、そのかっこいいモデルがnatureから
Chandra, S., Sharma, S., Chaudhuri, R. et al. Episodic and associative memory from spatial
scaffolds in the hippocampus. Nature 638, 739–751 (2025).
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08392-y
海馬の回路は、ナビゲーションのための空間マップの構築と、連続するエピソード記憶の保存という
2つの認知機能を担っています。これまでに海馬の空間表現に関するモデルは進展してきましたが、
エピソード記憶に関する良いモデルはありませんでした。
本研究では、新皮質‐内嗅皮質‐海馬のネットワークモデルを提案し、高容量の一般的な連想記憶・空間
記憶・エピソード記憶を実装しました。この回路(Vector-HaSH)は、コンテンツの保存とエラー補正
による安定状態の生成を分離することで、従来の記憶モデルに見られる「メモリークリフ」(急激な
性能低下)を回避し、保存数と再生精度のバランスを取ることができます。
さらに、このモデルはグリッド細胞の状態を基盤とする内部構造を持ち、非空間的なエピソード記憶の
構築にも不可欠です。これにより、連続する記憶を効率的に保存でき、記憶の連鎖を学習可能な低次元
の遷移問題として扱うことができます。
Vector-HaSHは、海馬の空間マッピングや文脈依存の表現に関する実験結果を再現し、記憶アスリート
が使用する「メモリーパレス」の回路モデルともなり得ます。
この研究は、海馬の空間マッピング・連想記憶・エピソード記憶の統一的な理解を提供します。
公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授