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けんぱちコラム
2025.08.19

170.ギャンブリング障害と遺伝の関係、その②

《ギャンブリング障害と遺伝の関係、その②》
※前回のコラムの続きです。

双生児・家族研究が示す遺伝的影響

複数の研究は、ギャンブリング障害の発症には遺伝的素因が大きく寄与することを明らかにしています。
双生児研究によれば、ギャンブリング障害の遺伝率(heritability)は概ね40〜60%と推定されています
pmc.ncbi.nlm.nih.gov。
例えば、最新の大規模双生児研究(オーストラリア双生児登録を用いた研究)では遺伝要因の寄与が
約60%にのぼり、男女間でその影響に有意差は認められませんでしたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
双生児研究とは、一卵性双生児と二卵性双生児を比較し、その差が個々人の持つDNAの影響の約半分で
説明される、といったタイプの研究です。
ですから、遺伝率というとき、親がどうだから子どもがこうなった、という意味ではなく、その人が持って
いる独特な遺伝子の組み合わせで説明できる率、という意味です。ここは誤解なきようお願いします。

一方で、家庭環境など共有環境の影響は有意ではなく、遺伝以外の要因は主に各個人特有の環境要因
(非共有環境)によって説明されることが示されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
これは「家族に共通の環境」よりも「個人が経験する固有の環境」(例:個人的なストレス体験や交友関係
など)がギャンブル障害リスクに影響を与えることを意味します。育て方の影響はほぼ0ということです。

家族歴研究からも、ギャンブリング障害には家族内集積(同一家系内での高頻度発症)が認められます
pmc.ncbi.nlm.nih.gov。1980年代の報告では、ギャンブル障害者の子どもの1/3以上が親もギャンブリング
障害だったとのデータもあり、遺伝的素因の存在を示唆していましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。
近年の研究でも、この傾向は支持されており、ギャンブリング障害患者の約半数が第一度近親者(親や兄弟
姉妹)に同障害の患者を抱えているとの報告がありますgreo.cagreo.ca。

興味深いことに、家族歴を有するギャンブリング障害患者は臨床像や転帰に特徴が見られるとの指摘が
あります。例えば、2024年の臨床研究では家族歴のある患者は以下のような傾向を示しましたgreo.ca:

• 発症年齢が若年で、障害が生じてから治療を受けるまでの期間が長くなりやすい
 (無治療で問題を抱える期間が長引く)greo.ca。
• ギャンブルによる経済的・法的トラブル(多重債務や違法行為など)を経験する率が高いgreo.ca。
• 一方で、治療介入に対する反応(改善度)が良好である傾向も報告されているgreo.ca。

このように、遺伝的素因を持つサブタイプの存在が示唆されており、家族歴の把握は臨床評価上重要と
考えられます。単純な快感条件付けタイプ、衝動性タイプ、不安タイプなどサブタイプがあり、
たとえば快感条件付けタイプは重度化しにくく、転帰も良いことが知られています。
よく、ギャンブリング障害の説明で、ドーパミンで脳が快感漬けされ・・・といった説明を見受けますが、
それは大きな問題とはいえなかったりします。
いずれにしても、少なくとも三つ以上のサブタイプが想定されており、対応や支援を変えていく必要があります。

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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