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けんぱちコラム
2026.01.26

175.「少し心配」と「病気」は同じではない、“ギャンブル対策を考えるときに大切な視点”

最近、「ギャンブルの問題」を早めに見つけるために、簡単な質問票(PGSIなど)が使われることが
増えています。
これは、「どの程度の心配な状態の人が、それぞれ社会にどれくらいいるのか」を知るための道具です。
ただし、ここで注意しなければならないのは、この質問票で「問題があるかもしれない」とされた人の
多くは、病気と呼べる状態ではないという点です。

世界保健機関(WHO)が定める「ギャンブル障害」は、長期間にわたって自分でやめられず、
仕事や家庭、人間関係などに深刻な支障が出ている場合を指します。
ところが、質問票で拾われる人の中には、「最近少し使いすぎた」「一時的に後悔したことがある」
といったレベルの人も多く含まれています。
こうした人たちに対して、「ギャンブルから完全に離れる自己排除が必要だ」と言えるでしょうか。
多くの人は、そうではないと感じるはずです。
実際に、海外でも自己排除は「自分ではもうコントロールできない」と強く感じている人や、深刻な
問題を抱えている人のための最終的な選択肢として位置づけられています。
多くの人は、使う金額を決める、時間を区切る、記録を振り返るといった、もっと軽い工夫だけで
十分に立て直すことができます。
むしろ、必要以上に「全面禁止」にしてしまうと、反動で一気に使ってしまったり、こっそり別の場所に
流れてしまったりと、逆効果になることもあります。

最近の支援の考え方は、「やめさせる」ことよりも、「困りごとを小さくすること(ハームリダクション)」
を大切にしています。
少し困っている人には少しの支えを、深刻な人にはしっかりした支援を、という考え方です。

大切なのは、「早めに気づくこと」と「強い対策を取ること」を同じにしないことです。
質問票はあくまで気づきのきっかけであって、病気の診断ではありません。
「心配な兆しがある人すべてに、同じ厳しい対応をする」のではなく、その人の状況に合った関わり方を
選ぶことが、無理のない、本当に役に立つギャンブル対策なのではないでしょうか。

公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授

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