けんぱち研究会
研究によると、「moderate-risk(中程度リスク)」とされるギャンブラーの多くは、短期的な自己管理で
コントロールできる可能性が高いことが分かっています。
ただし、「それだけで必ず十分」と言い切れる決定的な証拠があるわけではありません。
あくまで“そう考えるのが妥当である”というレベルです。
まず重要なのは、moderate-riskの人の多くは、状態が固定されているわけではないという点です。
海外の追跡調査では、ギャンブルのリスクレベルは時間とともに変化することが示されています。
moderate-riskの人の多くは、その後リスクが下がることも多く、ずっと高いまま続く人は少数です。
しかも、その多くは治療や自己排除制度を使っていません。
つまり、自然な経過や自分なりの調整によって改善している可能性が高いのです。
次に、具体的な「自己管理ツール」の効果です。たとえば、
•1日に使う金額の上限を決める
•利用時間をあらかじめ決める
•プレイ履歴や損失額を画面に表示する
•一時的に休止する
といった方法です。
これらを実際に使った人を分析した研究では、賭け金や損失額、プレイ時間が有意に減っていることが
複数の研究で確認されています。特にオンラインギャンブルの大規模データでは、任意で「入金上限」
を設定した人は、その後数か月にわたって支出や損失が減る傾向がありました。
実験研究でも、「あらかじめ上限を宣言してから始める」だけでリスクの高い選択が減ることが
示されています。これは、短期的な目標設定や予算決めが行動を実際に変える力を持っていることを
示しています。
また、全国調査では、こうした自己管理ツールを使っているのは、問題のない人よりも、
moderate-riskやproblemと分類される人の方が多いことも分かっています。
つまり、「少し危ないかもしれない」と感じている人ほど、自主的に予算設定や休止などの方法を
使っているのです。
これらをまとめると、次のことが言えます。
•moderate-riskの人は、必ずしも慢性的な「病気」状態ではない
•予算設定や時間制限などの軽い対策でも、実際に行動が減るデータがある
•そうした対策を使っているのは、まさにmoderate-risk層である
ただし、「moderate-riskの人は全員、自己管理だけで十分であり、自己排除は不要だ」とまでは言えません。
長期的な結果ま で厳密に比較した研究はまだ少ないからです。
それでも、現在のエビデンスを踏まえると、moderate-riskの人に対しては、まずは
•予算を決める
•時間を決める
•プレイ履歴を確認する
•一時休止を使う
といった負担の少ない自己調整を中心に支援することが合理的だと考えられます。
そして、自己コントロールがうまくいかない場合や重症化している場合に、自己排除や専門治療を検討する、
という段階的な対応が現実的だと言えるでしょう。
要するに、多くのmoderate-riskギャンブラーは、短期的な自己管理で改善できる可能性が高いことを示す
証拠はある。ただし、常にそれだけで十分とはまだ断言できない。
これが現在の研究から導かれる、もっともバランスの取れた結論です。
公立諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授